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家計・暮らし
2021.05.26

老後に必要な資金の平均は?不足額を把握して早めに準備しよう

目次

「自分や家族が長生きした場合のお金のことが心配」
「とりあえず貯めているけど、老後のお金については不安で仕方がない」
「老後のことは先の話過ぎて、貯める気がおきない」

TV番組や週刊誌で繰り返し報じられた「老後2,000万円不足問題」は記憶に新しいですが、「老後のお金の問題」は人によって色々なパターンが存在します。必要な資金も人それぞれです。

お金に関する不安や悩みの多くは漠然とした形になっているからこそ、実態以上に大きな存在として認識してしまいがちです。この記事では、老後に必要な資金を正しく把握し、将来の準備に繋げられるよう「老後に必要なお金、もらえるお金」の平均値を紹介します。

1老後の生活を支える資金

老後、仕事を退職して給料が入ってくることがなくなれば、生活の頼りとなるのは「年金」「退職金」「貯蓄」の3つです。それぞれの平均はいくらなのでしょうか。

年金

年金は、自営業の方などは「国民年金」、会社員や公務員の方などはそれに加えて「厚生年金」に加入しています。老後に受け取れる年金額の平均は、それぞれ以下のとおりです。(出典:厚生労働省「令和元年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」)

・国民年金(老齢基礎年金)……月額およそ5万6,000円

国民年金は、年金保険料を納めた期間に応じて受給できる金額が変わります。20歳から60歳まで40年間納めると満額の「月額6万5,141円(2020年度)」が受け取れます。

・厚生年金(老齢基礎年金+老齢厚生年金)……月額およそ14万6,000円

厚生年金は、年金保険料を納めた期間だけでなく、その間に受け取っていた給料の金額も影響します。現役時代の収入が多かった方ほど、老後に受け取れる年金額が多くなります。

日本年金機構の公式サイトでは、「平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43.9万円)で40年間就業した場合に受け取り始める標準的な年金額は、夫婦2人分で約22万円」と公表されています(2020年時点)。

退職金

厚生労働省の「就労条件総合調査(2018年)」によると、退職金の平均額は以下のとおりです。

・大卒・大学院卒、勤続20年以上、45歳以上の退職者の場合

退職理由 平均退職金額
定年 1983万円
会社都合 2156万円
自己都合 1519万円
早期優遇 2326万円

退職金の金額は、在職中の給料・勤続年数・退職理由などさまざまな要因が影響します。退職金制度がそもそも存在しない会社もあります。勤務先による差が激しいため、会社の就業規則を見るなどして自分の場合はいくらもらえそうか確認しておくのがおすすめです。

貯蓄

続いて、平均貯蓄額も見てみましょう。金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(2020年)」で、日々の生活費や引き落とし以外の「運用や将来のための貯蓄」について尋ねた結果が、以下のとおりです。

  • (画像=著者作成)

「中央値」は「平均値」のように極端に多い人や極端に少ない人の影響を受けないため、より実感に近い数値となります。2人以上世帯では800万円、単身世帯では30万円と世帯構成により大きな差があります。

なお、日々の生活費等も含めて預貯金も金融資産もまったくない人の割合は2人以上世帯で1.5%、単身世帯で5.1%でした。日々の生活費等も含めた預貯金や金融資産の平均保有額は、2人以上世帯(全年代)で1,770万円、単身世帯で845万円となっています。

年金と退職金など「もらえるお金」ではだけでは足りない老後の生活費を補うのが、今までの貯金です。老後に向けてある程度の貯金があれば安心ですが、実際にはほとんど貯金がないという方もいます。

特に単身世帯は、将来の生活や運用のための金融資産の中央値が30万円、4割以上が非保有と、2人以上世帯に比べて少ない傾向です。
お金に困らない老後のために、このあと解説する「老後の生活に必要な金額」と照らして、自分の今の貯金ペースで問題ないのか、今からどれくらいの貯金をしておく必要がありそうなのか考えてみましょう。

2老後の生活に必要なお金はいくら?

当然ながら、老後も生活費がかかります。次は老後に「出ていくお金」について見てみましょう。

老後に必要な生活費の平均(夫婦2人)

生命保険文化センターの「生活保障に関する調査(2019)」によると、夫婦2人で老後生活を送るときに必要な「最低日常生活費」として考えている金額は平均で月額「約22万円」でした。

最低限の生活だけでなく、レジャーや趣味、身内との付き合いなどにお金を使えるゆとりを持った暮らしを望む場合の予想生活費の平均は、さらに月額14万円を追加した月額「約36万円」となりました。

・実際の老後生活の動向

総務省の「家計調査(2019)」によると、実際の高齢世代の収支状況は以下のとおりでした。

夫65歳以上、妻60歳以上の2人暮らしの無職世帯では、平均の可処分所得(税金等を引いた手取り)が約20万7,000円、消費支出が約24万円で、毎月約3万3,000円が赤字の状態です。

先述のとおり、標準的な年金額として想定されているのが月約22万円、夫婦2人で老後生活を送るときに必要な「最低日常生活費」として考えられている金額も月約22万円、そして実際の高齢世帯の年金収入は月約24万円(ただし、可処分所得は約20万7,000円)となり、年金だけではやや厳しいといえるでしょう。

老後は贅沢せず慎ましく生きるのであれば、ギリギリ年金だけでも生活できるかもしれません。しかし実際には、仕事を引退したあとの時間を思いっきり趣味や娯楽に使いたい方もいるでしょう。現役時代の収入が低かった方や個人事業主の方など受け取れる年金額が平均より少ない方もいます。

老後に必要な生活費の平均(単身世帯)

続いて単身世帯の収支は以下のとおりです。

可処分所得の平均が月額およそ11万3,000円、消費支出が約14万円、単身世帯も夫婦世帯同様、毎月3万円ほど赤字になっていることが分かります。

支出の内訳を見てみると、単身世帯では夫婦世帯よりも「住居」の支出割合が高くなっています。総務省の「住宅・土地統計調査(2018年)」によると、高齢の夫婦世帯は持ち家に住んでいる世帯が87%ですが、高齢単身世帯では66%です。

高齢になっても賃貸に住み続ける場合、年金で収入が少なくなってからも家賃の支払いが継続するため、場合によっては家計が圧迫されることもあるでしょう。住宅を購入するのか、賃貸は継続し家賃を下げるかなども老後の暮らしを考えていくうえで重要なポイントです。

自分の場合は収支がどうなりそうか、赤字になりそうなのか、赤字なら毎月いくらくらい貯蓄を切り崩すことになるのか、具体的に考えてみましょう。

夫婦二人世帯、単身世帯問わず、老後の収入や支出はどうなりそうか、家を買うタイミングはいつがいいのか、気になることを自分で一つ一つ調べたり長期的なライフプランを立てたりするのは難しいと感じるかもしれません。

そんなときは、専門家の手を借りてみるのもひとつの方法です。例えばドコモの「暮らしとお金の相談サービス」では、無料で専門家(ファイナンシャルプランナー)にオンライン相談ができて、ライフプラン表(生涯の収支予測をグラフ化したもの)を作ってもらうことができます。

老後に必要なお金はいくら?

老後の生活費として夫婦で月24万円使うとして、65歳から平均寿命(男性:81歳、女性87歳)まで生きた場合、いくらになるか計算してみましょう。

月24万円×12ヶ月×20年間(65歳~男女の間を取って85歳と仮定)=5,760万円

平均的な月24万円の暮らしで5,760万円、少しゆとりをもって月30万円の暮らしなら7,200万円かかることになります。

不足する資金はどれくらい

家計調査の結果から、平均的な毎月の赤字額が3万円とすると、20年間で720万円(3万円×12ヶ月×20年間)足りないことになります。この金額分は年金に頼らず、貯蓄もしくは老後も働いて収入を得るなどしてカバーしておきたいところです。

先述のとおり、年金の平均受給額は標準的な夫婦で約22万円、退職金の平均額は約2,000万円、50代の2人以上世帯の貯蓄額(中央値)は800万円です。標準的な収入や支出であれば、生活に困ることはないように見えます。

しかし国民年金しか加入していない方、退職金制度がない会社にお勤めの方、勤続年数が短い方、現役時代の収入が少なかった方など、平均よりも入ってくるお金が少なくなりやすい状況の方は、そのぶん自力でしっかりと貯めておく必要があります。また、老後は日常の生活費以外にも、大きな出費が発生する可能性があることにも留意しましょう。

3生活費以外で老後に必要な支出

通常の生活費以外にも、出費の項目はあります。老後の生活で特に膨らみやすい出費を確認しましょう。

医療費

生命保険文化センターの調査によると、1回の入院にかかる費用の平均は約20万8,000円です。一般的に、高齢になるにつれて病院にかかる機会が増えます。厚生労働省の調査でも、病院にかかる人の数は以下のように高齢世代が圧倒的に多くなります。

  • (出典:厚生労働省「患者調査(2017)」)

現在、健康保険では医療費の自己負担割合が以下のように決まっています。

  • (出典:厚生労働省「我が国の医療保険について」)

ここにあるとおり、現役並みに所得がある方を除いて「70歳以上なら2割」「75歳以上なら1割」と現役世代より負担が軽く済む仕組みになっています。また、医療費の自己負担が一定額以上になったら、超えた分を国が支給してくれる「高額療養費制度」という制度もあります。

負担軽減のための制度はいくつもありますが、近年、高齢者層の負担を増やす方向で法改正が進んできているので要注意です。今後も制度を継続していくためとはいえ、老後を迎えるのがまだまだ先という方にとっては今の高齢世代より大きな負担になる可能性があることを知っておきましょう。

介護費用

人生のどこかのタイミングで体調を崩したり認知症になったりして介護状態になる可能性もあります。公的な介護保険制度があるため、訪問介護や老人福祉施設などを利用するときの自己負担は原則1割負担になります。

生命保険文化センターの調査によると、介護費用の平均は一時的な費用が約69万円、月額約7万8,000円、介護期間の平均は約4年7ヶ月となっています。単純計算で、総額500万円近くかかります。

慶弔資金

意外と見逃せないのが慶弔資金です。お葬式や結婚式のほか、孫の進学祝いに何か買ってあげたいという方もいるでしょう。頻繁に起こることではなくても、たまたま時期が重なると出費がかさんで家計を圧迫することもあります。

また、家族に迷惑をかけないために自分のお葬式代は自分で用意したいと考える方も多いです。葬儀費用の相場は100万円~200万円を見ておき、生活費とは別に確保しておくと安心です。

ゆとりある生活にはレジャーや趣味への出費も

老後は旅行に出かけたり趣味に没頭したり、娯楽のために使えるお金も確保できているのが理想的です。

必要な金額は人によりますが、一度自分の理想の老後に思いを馳せて、実現するための必要な資金を具体的に考えてみましょう。

4「自分の場合はどうなる?」をシミュレーションしよう

「老後にかかるお金」も「老後にもらえるお金」も、人によって大きく異なります。コストを抑えた生活をしていて退職金や年金もしっかりもらえて老後のお金の心配があまり必要ない方もいれば、今から家計を立て直して貯蓄に回していかないといつか困ってしまうような状態の方もいます。

老後のお金に対する漠然とした不安を解消するためには、「平均」にまどわされず、「我が家の場合はどうだろう?」と考えて具体的な金額をシミュレーションしてみることが大切です。老後に必要な費用から受け取れるお金を差し引いた分が、貯蓄など自力で用意する必要がある金額です。

老後を迎えてからなんとかしようとするより、なるべく早いうちから準備をしたほうが実行できる対策も多く、気持ちの余裕もでてきます。まずは自分や家族の老後を想像してシミュレーションすることから始めましょう。

自分で試算するのが難しければ、専門家に頼ることもひとつの手です。ドコモの「暮らしとお金の相談サービス」を使って、ファイナンシャルプランナーにオンラインで相談して、無料で作ってもらえるライフプラン表(生涯の収支予測をグラフ化したもの)を確認してみるなど、今から少しずつ備えていくのはいかがでしょうか。

文・馬場愛梨(ばばえりFP事務所 代表)

関西学院大学商学部卒業後、銀行・保険・不動産などお金にまつわる業界での勤務を経て、独立。自身が過去に「貧困女子」状態でつらい思いをしたことから、むずかしいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えする仕事をしています。AFP資格保有。

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